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自らの尊厳は自らが守れ(早期退職問題)

「武井誠 市民運動デイリーレポート」の一部記事について、その詳細報告を掲載しています。
このページは、2013年03月05日掲載デイリーレポート記事 の詳細報告です。

学校イラスト 自らの尊厳は自らが守れ

四月、教職最後の一年を迎えた
いよいよ六十歳、来春には定年退職を迎える
最後なんだからやらせてよ、担任を…
最後の一年、若手教員には我慢してもらい、学級担任になった
子どもたちと一番多く接せられるからだ
体力的には厳しいときもあったが、子どもと一緒に体を動かし、
子どもと一緒に生活をし、悲喜こもごもの学校生活が続いた
職場は多忙化の中、様々な仕事を押しつけられたが、やりきってきた
若手教員にもさまざまな機会で、私の培ってきた経験と手法を伝えてきた

多忙な二学期が終わる終業式の日のことだった
校長に呼ばれて校長室に入る
若い校長はばつ悪そうにこう述べた
「先生、教育委員会から通知が来ましたので、お知らせします。県の退職金条例が今日、可決されて、退職金の額が二月から変わることになりました。満期の三月末でおやめになると約百五十万円減額されます。一月三十一日に退職されれば、今の条例ですから、減額されません。どちらかを選ぶのかは、先生のご自由です。早期に退職されても、臨時採用教員は、教育委員会で責任をもってあてると聞いています。」
組合から情報は得ていたものの私の体に電気ショックが走った

三月末まで在職すれば、「退職金が減額」とは、普通に考えれば、早期退職勧奨だ
満期定年まで在職してほしくないというメッセージそのもの
あなたの代わりはいくらでもいるんですよという声だ…
悔しさがわいてきた
それは長年にわたり働いてきた教員としての誇りを傷つけられた怒りだ
真面目に最後まで努力してきた者が報われない制度って一体なんだ?

わき起こる疑問を校長にたたきつけたい衝動がわく
その気持ちが伝わったか、校長も伏し目がちにこう丁寧に付け加えた
「教育委員会も個々の先生方のご事情で判断してくださいとのことです。お返事は一月十一日までにお願いします。」

静かに帰宅してから、年末、正月をはさんだ二週間の重苦しい日々
百五十万円という金額、そして、再就職のこと、年金のこと、健康のこと、年老いた母親の介護、まだ学生である子どもの養育費、まだ残っている家のローン…そして、教員としての生き甲斐…
さまざまな問題が妻との会話の中心となった
退職前のつつましやかな家庭を突如襲ったひどい仕打ちだ
まさに苦渋の選択…
陰湿でいやな正月は過ぎていった

三学期が始まった
校長に「続けます」とだけ答えた
校長にホッとした表情が見えたのが悔しかった
悩んだあげく、抗議の意味も込め、早期退職を選択した友人もいたのに…

一月二十二日の朝だった
新聞の活字が目に飛び込んだ
「教育への信用失墜懸念」
「埼玉、教員百十人駆け込み退職」
「生徒より金を選ぶのか」

一気に始まった埼玉県教員「駆け込み退職」報道の洪水
「駆け込み」という言葉に、既に非難のメッセージがたっぷりと込められていた

さらに翌日、目を疑った
県知事が「辞める教員は無責任」「不快な思い」と述べたとの報道
文部科学大臣も「自己都合で辞めるのは決して許されない」とほざいた
早期退職希望を撤回させ、あぶり出そうとする県会議員
なんという不条理、ふざけてはいけない
あなたたちが組合の反対にもかかわらず、問題のある制度をつくったのだ
その制度に従った教職員を聖職論に依拠してたたく卑劣さ
定年退職者の尊厳を傷つけた上に、さらに、弱者にムチを振るうとは!
自らの責任を棚に上げ、強者の論理で、弱者をたたく歪んだおぞましい構図

連日連夜、怒りに満ちた組合からの反撃は続けられた
知事への抗議、県教委への申し入れ、問い合わせ、速報、テレビ・新聞取材の対応…
事実が伝えられるにつれ、次第に増える行政批判、教員擁護論
「制度設計の失敗聖職論で隠す」「駆け込みはむしろ行政側」との新聞報道
制度を批判し、教員を擁護する多くの投書が続いた
県に寄せられた県民の意見百二十六件中、引き下げを早めた県が悪い、教員を悪者にした人気取り政策との県批判が百八件、教師批判は十八件のみと産経新聞報道
金のために金では計れない教職員の「信用」という宝を埼玉県は失ってしまったのだった

現場教職員をなめてはいけない
現場公務員労働者をバカにしてはいけない
管理職も含め、四万人近い現場教職員の目がギラギラと睨んでいる情景が浮かんだ

私たちは知った
自分たちの尊厳は、自分たちで守らない限り守れないという真実を
崩れゆく信頼社会を押しとどめなくてはならない
強者におもねり弱者がさらに弱者をたたく構図から今こそ解き放たれねばならない
我慢できない腹の底からの怒り
次の攻撃をはね返そう!地方公務員給与の削減反対!
強者の論理を断じて許すな!
連帯の和を大きく広め、組合をもっともっと強くしよう!
教職員は断じて聖職者ではなく、誇りをもって働く生活者である
私たちは、子どもたちに真実を教え、自他共に大切にしながら、地域社会と共に歩む
教育労働者であるのだ
仲間よ、自らの尊厳は自らが守ろうではないか